精油の希釈について-精油を原液で皮膚に使って大丈夫なのかを解説します!

精油の希釈について

精油を原液で皮膚に使って大丈夫なのかを解説します!

ロバート・ティスランド

この記事の執筆を勧めてくれたHana Tisserandに感謝を込めて

精油を使用する際、特に精油を皮膚に塗布する場合、大多数のアロマセラピー専門家によって、希釈してからの使用が推奨されていることはご存知でしょう。『精油を希釈すべき理由』はたくさんありますが、ここでは、様々な希釈濃度範囲についての説明を交えながら、「精油を希釈すること」の意義について説明します。

まず、精油原液だけで構成された製品は用途が限られますし、内容量によっては非常に高額になってしまいますね。精油を希釈するもう一つの理由は『安全のため』で、有害反応の可能性を避けるためであれ、製品の安全ガイドラインを遵守するためであれ、希釈した方が良いのです。これについては、後ほど詳しく説明します。

まず、いくつかの基本的な事実を説明します:

・希釈や濃度について話すとき、私たちは混合物中のある物質(精油)の量を指しています。例えば、5%希釈の場合、製品全体の5%が精油で、95%が 「その他のもの 」で、簡単に分離できません。
・私は%(パーセンテージ)で話をします。パーセンテージは、滴、ミリリットル、液量オンス、グラムなど、どのような測定値にも変換できるからです。
・希釈の計算では、重量または体積のどちらかを選びます。そしてこれらを同時に両方使うことはできません。どちらか一方に決める必要があります。
・精油ビンから落ちる1滴には必ず誤差が生じるので、滴数を使った換算率は常に概算です。
・インターネットなどで「FCO(分留ココナッツオイル)に精油を1/4混ぜる」というような説明を目にすることがありますが、このような希釈は危険な可能性があります。例えば、4分の1は25%濃度を意味しますから、安全性の見地からは、大抵のシチュエーションで濃度が高すぎるのです。

比率は、使用する表現によって大きな違いが生じるため、混乱することがありますね!2分の1と言えば、1:1(50/50)の比率を意味します。一方、1:2の比率は、3つのうちの1つということなので(33/67)、つまり33%ということになります。重要なのは、それ(精油)が合計の中でどのくらいを占めているかということです。

TRPチャンネル

精油を希釈する主な理由は、皮膚刺激やその他の皮膚反応を避けるためです。精油には抗炎症作用があり、肌のバリア機能を回復させる働きがあることがわかっています。また一方で、精油の肌への作用は希釈濃度に依存することがわかっています。つまり、精油の濃度が高ければ高いほど、有害反応のリスクが高まるのです。それはなぜなのか?、さらに薬効と有害反応のメカニズムを見てみましょう。

3種のTRPチャンネル

皮膚の機能のひとつに、刺激などの不快な感覚を通して危険を知らせることがあります。皮膚には一過性受容体電位(TRP)チャンネルと呼ばれる受容体があり、熱、冷たさ、痛み、刺激などの感覚を感知します。TRPチャンネルは、私たちの振る舞いを変化させ、怪我を避けるよう促す警告システムとして機能するのです。もしそのシグナルを無視して、例えば熱などの発生源(ガスコンロの火など)から離れなければ、身体はより強いシグナルを、大抵は「痛み」という形で送ってきます。ちなみに、TRPチャンネルは皮膚の表面だけでなく、腸や気道など他の上皮組織にも存在します。

精油成分の多くは特定のTRPチャンネルを活性化します。例えば、クローブ(オイゲノール)、シナモン(シンナムアルデヒド)、オレガノ(カルバクロール)、タイム(チモール)などの精油は、刺激(炎症)反応を起こしやすい精油です。

刺激(炎症)反応だけでなく、アレルギー反応や光毒性反応も存在し、この3つの中ではアレルギー反応が最も一般的です。刺激反応が起きた場合に、皮膚に何かを塗って皮膚に残っている精油を薄めることは理にかなっています。しかし、アレルギー反応の場合は事情が全く異なります。アレルギー反応を起こした場合、あなたは何かに対してアレルギーを起こした(ある物質がアレルゲンと見なされた)ということですから、同じような反応を起こさなくても、二度とその精油を使うことができなくなるかもしれません。精油に対するアレルギー反応とそれを避ける方法については、こちら(英語)をご覧ください。

精油はTRPチャネルと相互に作用しやすい、小さな揮発性化合物で構成されているため、皮膚や腸、気道を刺激する可能性があるのです。さらに、精油は皮膚に浸透することができるため、特有のリスクが生じます。しかし、これらの特性は利点にもつながります。

例えばメントールはTRPM8を活性化し、このチャネルは低温を感知します(Liu et al 2013)。つまり、メントールを約40%含有するペパーミント精油は、皮膚上で冷たく感じるのです。すると皮膚の温度は変化しませんが、私たちの身体は寒さを感知したかのように反応します。つまり、血液がその部分を温めるために殺到するわけです。ペパーミント精油やメントールは身体を冷やす精油と思われがちですが、実際には”身体を温める反応”を呼ぶ精油と言った方が正しいわけです。

TRPチャンネルを介したメントールのもう一つの作用は鎮痛です(Liu et al 2013)。鎮痛作用とその他の特性の組み合わせにより、ペパーミント精油は筋肉痛、神経痛、ほとんどのタイプのかゆみに特に有用です。神経痛には、0.5-1%のメントールが有効であることから、1-2%のペパーミント精油も有効と言えます(Colvin et al 2008, Storey et al 2010)。

希釈には悪魔が宿っている

皮膚のもうひとつの大きな機能は、有害物質や微生物を体内に侵入させないことで、私たちの体が私たちを守る方法はいくつか存在します。第一に、何層にも重なった皮膚細胞からなる皮膚バリアがあり、侵入を極めて困難にするように配置されています。もし「侵入者」がバリアを通して侵入してきた場合には、次に免疫システムが作動して、血液を送り込み、炎症反応と呼ばれる防御のカスケードを開始します。これは発赤、ぶつぶつ、かゆみ、痛みを伴う感覚という形で見てとれます。

精油は刺激や炎症を鎮めますが、その際には希釈の重要性を理解することが肝要です。同じ精油でも、希釈の仕方によって、刺激を与えたり、鎮静化したりするものがあるからです。例えば、シトロネロール(ローズオットー、ゼラニウム)とゲラニオール(パルマローザ、ローズオットー、ゼラニウム)は、どちらもTRPV1活性化物質ですが(Denda et al 2010)、希釈すると、これらの成分や精油は最も強力な抗炎症剤となるのです(Abe et al 2003、Abe et al 2004、Katsukawa et al 2011、Kobayashi et al 2016、Maruyama et al 2005、Ye et al 2019)。

実際、TRPV1モジュレーター(調整物質)は、かゆみ、皮膚バリア障害、熱痛、光老化に対する治療効果が期待できるのです(Lee et al 2012, Tang et al 2022)。TRPA1は、アロマセラピーに関連するもうひとつのチャンネルといえます。in vitro研究では、リナロールはTRPA1チャンネルを 100マイクロモルで活性化し、500マイクロモルでは遮断しました (Batista et al 2011, Reira et al 2009)。メントールとカンファーもTRPA1モジュレーターですが、その効果は希釈濃度に依存します。

なんだか込み入った話になってきましたね!さて、精油を使う際、どんな時にどんな希釈濃度が適しているか、ご存じですか?

精油はどの程度希釈するべきなのか、またその理由は?

精油を使用する際に、考えられる有効性を最大化しながらリスクを最小化したいと常に考えているとして、どのように希釈すれば良いでしょうか、そしてその理由は?

先に述べたように、私たちは滴数ではなくパーセンテージを用いて説明しようと思います。パーセンテージは、どのような尺度、どのようなスケールにも変換することができます。もし変換に自信がないのであれば、私たちティスランド・インスティチュートの単科講座の一つをお勧めします。(クリックすると飛びます)

エッセンシャル・カリキュレーション日本語版(最も人気のある単発クラスです)

おおよその希釈範囲を設定することは難しくありませんし、私は以前から、このような一覧チャートをお勧めしてきました:

それでは詳しく解説しましょう。

上記の希釈濃度は、使用目的に応じて6段階に分かれています。これらはルールではなく、有用なガイドラインと考えてください。特殊なケースでは例外があるかもしれませんが、これらのパーセンテージは、”有効でありながらも安全な”希釈の目安になります。先に述べたように、精油の濃度が上がれば上がるほど、皮膚に有害反応が起こるリスクが高くなります。あるレベルまでは量を増やしたり濃度を高めたりすると、それに応じて治療効果も高まりますが、ある時点で頭打ちになります。例えば5%から10%にしても、5%の時以上の効果は期待できなくなる、といった感じです。言い換えれば、濃度を上げるとリスクは常に高まるのに、ベネフィット(有効性)は高まらない可能性があるということです。

具体的な状況によっては、調整が必要な場合もあります(化粧品のブレンドについてはこちらの記事(英語)をご覧ください)。非常に有用な経験則は、低濃度から始めて、必要な場合にのみ濃度を上げることです。

これらの範囲は、安全性と有効性の両方の研究に基づいて開発されました。それぞれの詳しい説明はこちらです:

1 – 敏感肌、バリア機能が低下した肌  0.2-1%

肌がすでに反応しやすい、あるいはバリア機能が低下している人向けの濃度。状況を悪化させないよう、特に注意深く、非常に低濃度の精油の使用を導入する必要があります。このようなケースでは、綿密なモニタリングが推奨されます。

2 – フェイシャル用品とデオドラント  0.5-1.2%

多くの美容効果(乾燥肌、老化肌など)には、一般的にこの範囲が望ましいです(Altaei 2012, Auffray 2007, Reuter et al 2008)。この2番目に低い濃度範囲は、顔や脇の下などの敏感な部分に塗布するためのものと考えてください。

3 – ボディオイルとローション  1-3%

この希釈範囲は、アロマセラピストたちが精油を使ったボディマッサージに50年以上使用してきたもので、市販のパーソナルケア製品に使用される香料の含有%の目安でもあります。

4 – 浴用製品(シャンプーなど)  2-4%

このカテゴリーには、洗い流す用製品(石鹸、ボディソープなど)や、その他の入浴やシャワーで使用する製品が含まれます。洗い流す用の製品は肌に残りませんが、入浴用は精油がお湯の中に均等に分散され、さらにきちんと希釈されていることを想定しています。また香りを実感した状態で楽しみたいので、少し濃度は高めの設定にしています。

5 – ニキビ局所治療、創傷治癒   2-10%

このカテゴリーは、学術研究が示す有効な濃度に基づいています。臨床試験から、5%が、ニキビやかゆみに効果的な希釈濃度であることがわかっています(Elsaie et al 2016, Enshaieh et al 2007)。ここで私たちは、有効濃度範囲内でありつつ、問題に対処するために十分なインパクトがあること、かつ、有害反応を回避する濃度範囲であることを確認する必要があります。これはまた、短期間の、的を絞った使用を前提としています。精油濃度が10%で効果が見られない場合は、使用方法(キャリアなども含め)を再考する必要があるかもしれません。

6 – 痛みや「気分転換」のためのロールオン  3-10%

月経痛に対しては、臨床研究では3~5%の濃度が用いられています(Sut & Kahyaoglu-Sut 2017)。筋骨格系の痛みに対しては、最大10%が必要かもしれませんが、1.5~5.0%で有効な場合が多いとのことです(Bako et al 2023)。精油で対処するほとんどの疼痛は、皮膚レベルではなく、筋肉や結合組織レベルであるため、望ましい効果を得るためには、より高い濃度が必要な場合があります。症状がどのくらい急性かどうかに応じて、濃度を上下に調整します。ロールオンの場合、希釈する際には皮膚の小さな範囲に使用することを想定しています。敏感肌の方は、ロールオンではなく、オイルを衣服につけるか、ペンダントなどのジュエリーディフューザーを使用することをお勧めします。

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最後に、上記の表は、特定の制限があるものを除き、すべての精油に適用されます。IFRAのウェブサイトでは、IFRA規制のデータを見つけることができますが、調べて実践するのは簡単ではありませんし、そのほとんどは成分にのみ適用されています。また、2014年に私が共著で出版した『精油の安全性ガイド』にもそのほとんどが掲載されており、成分の最大値を精油の安全データに当てはめています。

また、私が書いたこの記事(英語)で、最も刺激性の高い精油とアレルギー誘発性の高い精油の表と、その最大値を確認することができます。

希釈濃度はあなたの皮膚を守りもするし、壊しもする

正しい成分をすべて含んでいるにもかかわらず、私の意見としては、希釈濃度が不適切なために潜在的な効能が活かせていない製品の例を挙げたいと思います。その製品はドテラ(DoTerra)社製で、イモーテル・アンチエイジング・ブレンド。顔に直接塗布するもので、フランキンセンス、サンダルウッド、ラベンダー、エバーラスティング、ローズ、ミルラの精油が原液で配合されています。使用方法とその効果は以下の通り:

・顔、首、デコルテに薄く塗り、気になる部分に繰り返し塗ります。続いて、お好みのドテラのモイスチャライザーをお使いください。
・朝晩のフェイシャル習慣に取り入れてください。
・小じわを目立たなくします。
・加齢によるシワの目立ちにくい肌へと導きます。
・なめらかで輝きのある若々しい肌を保ちます。

私の意見では、この製品に含まれる精油の多くはこの目的に見合った適切な特性を持っているのですが、原液100%の使用ではなく、1%程度に希釈しての使用で、まったく問題なく効能を発揮するはずです。製品ページには次のようなガイドラインも見つけられます: 「敏感肌の方はキャリアオイルで薄めてからご使用ください。」これは何も付け加えないよりはましですが、後付け感が否めません。それに、もしこの製品を使って炎症反応が起きたとして、それがアレルギー反応であった場合には、次に使うときに希釈すれば治るというものではないのです。

この製品(イモーテル・アンチエイジング・ブレンド)にひどい反応を示した人の体験談です:

当初、これを直接顔に使いました。夫が言うことには「まるでボトックスを失敗したみたいだ。」塗ってから24時間後までは何の兆候もなかったのですが、これを塗ったところは、どこもかしこも腫れ上がり、赤くなり、かゆくなりました。その後、そのブレンドが希釈されていない精油原液であったことに気づき(最初にそれを確認すべきだったかもしれません)、FCO(分留ココナッツオイル)を1週間塗りました。しばらく痒みが続き、治ると少し皮がむけましたが、なんとか治りました。

本件の有害反応データファイルの全文はこちらをご覧ください

健やかな肌を手に入れるために多額の出費をした後に望むような経験ではないことには間違いありません。その消費者は、この原液ブレンドに含まれるフランキンセンス精油がこのアレルギー反応の原因であることをすぐに突き止めました。これが判明したので、それ以降フランキンセンスの使用を完全に避けることができました。また特筆すべきは、分留ココナッツオイルを数日間塗布しても、かゆみを防ぐことはできなかったことです。

エバーラスティング/イモーテル/ヘリクリサム精油(1つの精油に複数の名前がついています)、またはフランキンセンス精油を、いずれも原液で塗布した場合の有害反応報告は、こちらこちらこちらこちらのようなものがあります。また、私たちの精油の有害反応データベースには、他の精油を原液で使用したが故に起きた有害反応がさらにたくさん掲載されていますのでご確認ください。

精油の原液使用のもうひとつの問題は、アルコールと同様、揮発によって肌を乾燥させることです。希釈したものでも乾燥させることがあります。ある報告では、ペパーミント精油とティートリー精油は1%では乾燥させなかったが、5%ではどちらもわずかに乾燥させました。精油は乳化剤を使って水に溶かして塗布しました(Nielsen 2006)。

市販のフェイシャルケア・ボディケア製品を見てみると、香料の濃度は上の図に示したものとほぼ一致しています。化粧品には0.5%程度の香料が含まれていることが非常に多いのです。確かに、これらの香料は製品の香りを良くするためだけに存在し、ほとんどの場合、治療目的ではありません。それでも、濃度を0.5%から100%にするのは意味がないのはお分かりですよね!

そこで、もしこの製品(ドテラのイモーテル・アンチエイジング・ブレンド)をお持ちの方がいらっしゃいましたら、誰であっても、お好みの適切なキャリアに適切に希釈してお使いください。

法規制

すでに述べたように、精油の中には有害反応の原因となるものもあります。そしてどんな事例でも、それはいつでも濃度に依存しているのです(Johansen et al 1996)。そう言うわけで、精油は有害反応を引き起こす可能性があるため、皮膚科医から注意を受けることが非常に多いのです。例えば、ロサンゼルスを拠点とする皮膚科医Divya Shokeenは、この記事(英語)の中で次のように述べています。

「精油の中には、他のものよりも刺激が強いものもありますから、よく調べて、心配なことがあれば皮膚科医に相談することが大切です。議論の余地のない、たったひとつの真実と言えるのは、精油の原液を決して肌につけてはいけないということです。」

精油の中には有害反応を引き起こすものも存在することから、その使用は様々な消費者保護団体によって規制されています。

有害反応の問題に対処する試みとして、EUは、肌につけたままにする製品に、以下の精油成分のいずれかが0.001%以上含まれている場合は、その化粧品に表示することを義務付ける法律を可決しました:

アニスアルコール
ベンジルアルコール
桂皮酸ベンジル
サリチル酸ベンジル
シンナムアルデヒド
シンナミルアルコール
シトラール
シトロネロール
クマリン
オイゲノール
ファルネソール
ゲラニオール
リモネン
リナロール

加えて以下の2つのアブソリュートが含まれます:
ツリーモス・アブソリュート
オークモス・アブソリュート

精油もこれらの成分を0.001%以上含有している場合のみ、ラベルに表示義務が生じます。(この0.001%と言う値は、科学的根拠のない恣意的な制限) しかし、ヨーロッパの多くの小売店は、安全でないと思われる可能性のある商品と関わりたくないため、アレルゲンの表示が必要な商品を販売しません。

規制対象成分を少なくとも1つ以上含有する精油リスト

これが最大値ということで、本格的に規制が実施された場合、多くの精油が事実上フレグランスや化粧品に使用されなくなります(リモネンは数十種類の精油に含まれていますので)。その対象は、表に示したすべての精油のみならず、さらに多くの精油が含まれることになるからです。

この法規制がなぜ存在するのかといえば、香料が使用されている製品による有害反応の事例を減らすためです。私の意見としては、これは良かれと思っての規制とはいえ、お粗末なものです。ここでアレルゲンと呼ばれるものの中には、実際はリスクがごくわずかなのものも存在するからです。例えば、パッチテストを受けた1,508人のうち、リモネンやゲラニオールに反応した人はおらず、リナロール、シトロネロール、桂皮酸ベンジル、アニスアルコールに反応した人はわずか0.1%(1,000人に1人)でした。一方、シンナムアルデヒドに反応した人は1.35%(77人に1人)で、その13倍であったとのことです(Heisterberg et al 2011)。

精油の希釈を規制し、安全な範囲を定めているもう一つの機関は、IFRA(国際フレグランス協会)です。EUの法規制とIFRAの規制の顕著な違いの1つは、IFRAが「エビデンスに基づいた最大値」を使用していることです。例えば、(光毒性を避けるための)リモネンのEUの最大値は0.001%ですが、IFRAの最大値は1.25%となっています。ゲラニオールについては、EUは0.001%であるのに対し、IFRAは4.7%です。『精油の安全性ガイド第2版』(私が共著で出版した本)には、EUとIFRAの規制についても書きましたが、どこが慎重すぎるかも説明しています。しかし、ヨーロッパで一般消費者に製品を販売したいのであれば、たとえガイドラインに意味をなさない部分があったとしても、これを遵守する必要があるのです。

ではどうすればいいのか?

あるグループ(つまりEU)は、精油によっては皮膚に安全と言える使用濃度は約0.01%(成分から推定)だと示唆しており、一方で、世間では精油100%(原液)で構成された製品(化粧品)が販売されています。どちらが正しいのでしょうか?

答えは中庸にあると思うのです。私は、上記のどちらのアプローチも正しいとはいえず、両極端だと考えています。それらはいずれも極端に愚かで、極端にパラノイア(妄想癖、偏執癖)だと言えます。レモン精油を安全に使用する際には、100%(原液)か、それとも0.01%か?IFRAの(光毒性を避けるための)レモン精油の安全限度は2%であり、これは0.01%と100%の間にあります。ちなみに、これは安全である上限(最大量)であり、推奨量ではありません。

他の有効成分と同様、精油にもリスクがあり、原液のまま肌に使用するのは賢明でもないですし、する必要もないことです。精油の安全性と皮膚について深く知りたい方は、ティスランド・インスティテュートの認定コースをご受講ください:

精油の安全性マスタークラス日本語版【第4期】は2025年4月14日開講予定です。

参考文献

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ロバート・ティスランド

国際的に著名な精油関連の研究家。著書『アロマテラピー:(芳香療法)の理論と実際(The Art of Aromatherapy)』(1977)は12の言語で出版され、『精油の安全性ガイド第2版』(2013)は精油の安全性について検討する際の基準として広く認知されている。また、2015年にオンラインスクールとして再始動したティスランド・インスティチュートには世界各地から2000名以上の受講生が集い、一部の講座は日本語字幕版もリリースされている。2023年には、ティスランド・インスティチュート日本語版ウェブサイトが完成。

IFA、IFPA、A I A名誉生涯会員。www.tisserandinstitute.jp

翻訳 池田朗子 M.I.F.A.   

1994年以降東京を中心にアロマテラピー講師として活動開始、現在に至る。2000年に英国へ転居後は教育活動の他、日英雑誌への執筆、国際カンファレンスへの登壇、『精油の安全性ガイド第2版』など翻訳も多数手がけている。英国IFA理事(2005〜06年)www.aromaticsworld.com