ファンクショナルグループセオリー(官能基による芳香成分の分類)は有効か?

ファンクショナルグループセオリー(官能基による芳香成分の分類)は有効か?

ロバート・ティスランド

注:論文全文へのリンクと、日本語による論文要約は本文最後に掲載しています。

自然は複雑です。1本の精油には数数多くの成分が含まれており、そのそれぞれが単独で特定の性質を持っています。

自然界のこうした複雑さをどう理解すればよいのでしょうか?

私たちは、しばしばある種のパターンや大まかな分類に頼り、起こっていることの「おおまかな見当」をつけます。時にはそれで十分機能することもある。しかし、その「おおまかな見当」が見当違いである場合、どうなるでしょう?

気づいていないかもしれませんが、精油について教えられ書かれている情報の多くは、ファンクショナルグループセオリー(FGT)と呼ばれる、矛盾がある理論に基づいています。

精油成分は、それの持つ官能基、または化学グループに基づいて分類することができます。その分類には、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、フェノールなどがあげられます。

FGTは、約30年にわたり、体内で精油が及ぼす作用を理解するための近道として用いられてきました。つまり、学生は各官能基ごとの性質を学び、どの精油がどの分子を豊富に含有しているか、そしてそれらの各分子がどの官能基をもつかということから、精油の性質を学んできました。

しかし、この分類法は化学的には理にかなっているものの、精油成分の治療特性を予測したり、治療特性について説明する正確な方法ではないことが判明しているのです。その根拠の一端として、例えばFGTが、もともと長い間否定されてきた仮説に基づいていること、また現在の研究結果が精油成分の特性はこの理論のように明確に分類できないと示していることがあげられます。

マルコ・ヴァルッシ、アンドレア・コント、ジョイ・ボウルズ、そして私は、FGTが精油の特性を学習・予測する有用なツールではない理由を、包括的に説明する論文の執筆に、2年間を費やしました。また、論文の中で、この理論の代替案として、科学をより正確に反映した、詰まるところ、よりシンプルなアプローチを提案しています。成分の特性を研究することは極めて有用ですが、それらは官能基による分類ではなく、各成分について個別に研究されるべきです。FGTを放棄することで、今まで習ってきた精油成分の治療的活性をいちいち変更する必要があると言っているのではありません。今まで教えられてきた精油成分の治療特性が、仮定ではなく効果のエビデンスによって証明されるならば、それで良いのです。

Debunking Functional Group Theory by Robert Tisserand, Marco Valussi, Andrea Cont and E. Joy Bowles, full text PDF(英語のみ)

Executive Summary in English, PDF

日本語の論文要約

国際的に著名な精油関連の研究家。著書『アロマテラピー:(芳香療法)の理論と実際(The Art of Aromatherapy)』(1977)は12の言語で出版され、『精油の安全性ガイド第2版』(2013)は精油の安全性について検討する際の基準として広く認知されている。また、2015年にオンラインスクールとして再始動したティスランド・インスティチュートには世界各地から2000名以上の受講生が集い、一部の講座は日本語字幕版もリリースされている。2023年には、ティスランド・インスティチュート日本語版ウェブサイトが完成。

IFA、IFPA、A I A名誉生涯会員。www.tisserandinstitute.jp

翻訳 池田朗子 M.I.F.A.   

1994年以降東京を中心にアロマテラピー講師として活動開始、現在に至る。2000年に英国へ転居後は教育活動の他、日英雑誌への執筆、国際カンファレンスへの登壇、『精油の安全性ガイド第2版』など翻訳も多数手がけている。英国IFA理事(2005〜06年)www.aromaticsworld.com